モーエンセンが初代FDBモブラー代表を辞める際に、モーエンセンの親友でもあるハンス・J・ウェグナーに推挙され2代目代表の大役についたのがポール・M・ヴォルタです。ハンス・オルセンの工房でも修行をしていた家具職人で、家具製作に非常に長けていました。
三本の丸みを帯びた笠木から構成される背は非常に独創的で、美しさと安定した座り心地を与えてくれます。ヴォルタがFDBモブラーから独立した後に生み出す彼の代表作コロナチェアはこの流れを汲んでおり、ヴォルタらしさが非常に出ている作品です。
そのJ48に世界的にも評価の高いテキスタイルデザイナー皆川明氏が手掛けるmina perhonen(ミナ ペルホネン)の生地“dop tambourine”を採用しました。
両面モールスキンのダブルフェイスによる生地は、使い込むうちに表面の糸が擦り減ることで、裏面の色が現れてくる性質を持ちます。
長年使い続けるうちに見せる表情は、決して「劣化」ではなく、時間をかけての「変化」であり、それは愛着へと変わって行く。 生地自体が年月の中で変化し、擦り切れたところからのぞく新しい色を楽しむことができるのです。
繊細に起毛された滑らかな肌触りのテキスタイルは、 日常の暮らしに寄り添うアイテムの張地として適しています。
ハンス・オルセンの工房で修業した後にThe School of Arts and Craftsを卒業、マイスターの資格を得る。卒業後はThe Danish School of Art and Desigで教師として若手デザイナーの育成に尽力した。
1949年にウェグナーに紹介され、FDBに入社。翌1950年にはモーエンセンが勤めていたデザインマネージャーを引き継ぎ、彼の「家具は人々の生活を向上させる」という信念も同時に引き継ぎ、指針とする。モーエンセンが家具により行った人々への職や金銭の確保でなく、手に取りやすい機能性とシンプルさ、手軽さを強調した「J46」はFDB最大のヒット商品といわれており、1950年代のデンマーク家具職人ギルドの展示会では毎年のように出品されていた。FDBを1956年に退職すると同時にデンマーク国内の応用芸術学校で再び教師となる。彼の指導によりそのシンプルなデザインをベースとして用いるデザイナーは多い。
デザイン・機能面では完璧主義で、流行などの短命な家具を嫌がり、丈夫でシンプルなデザインを多く遺している。ウインザー家具を源流とする現代スウェーデン風のペグチェアをモデルとし、デンマークの人々の暮らしの質を向上させた。
代表作に『J46』『J48』『コロナチェア』などがある。