当時はまだ職人が一点一点家具を作るの事が主流で、家具はとても高く、普通の人ではなかなかすぐに買うことの出来ないものでした。「家具は人々を幸せにする」と信じていたモーエンセンは普通の若者でも良質な家具を買えるようにしたいという夢を持ち、それをかなえるために、FDBモブラーの初代代表になりました。
モーエンセンとFDBモブラーとの関係は非常に良く、今まで大量生産出来なかった環境を変え、FDBモブラーの基盤をつくっていくことになります。
このJ52は当初J6としてデザインされ、その後座面の変更やディテールの変更があり、品番が変更になりましたが、FDBモブラーの一番はじめの広告にも登場し、その後もポスター等に採用されるなど看板的な商品として人気を集めました。
コーアクリントの教えから、J52はイギリスのウィンザーチェアにヒントを得て、シンプルで美しく作りやすい、当時のデンマークの世相に合わせリデザインされたスポークバックチェアです。
J6からJ52になった際に新しくロッキングするタイプのJ52Gも開発され、通常タイプのJ52Bと共に、FDBモブラーの代表的な椅子として時代を牽引しました。FDBモブラーの顔であったデザインなので、最後まで残し一番はじめに復刻された中のひとつとなっています。
1914年デンマーク西部の都市オールボー生まれ、デンマーク王立アカデミー建築家でコーア・クリントに師事し、彼の助手としてデザインを学び、マイスターの資格を得る。同い年で親友のウェグナーとは時に協力し商品を作ったり、競い合うなど、公私ともに非常に親交が深かった。
1942年からはFDB(デンマーク生活協同組合家具部門)のプロダクトデザインマネージャーとして活動し、 「庶民の為の家具を造ってほしい」というFDBからの依頼を受け、簡素なデザインとペーパーコードによる座面という 家具の知識がなくても組み立てができる代表作であるJ39をデザインし、人々に職を確保させるという形でこの依頼を達成した。
1950年にFDBを退職、その後も自身の事務所を構え、FDBで培ったアメリカのシェーカー教の家具を リ・デザインした直線的で力強い家具を数多く制作している。特にストレージ系の家具に関しては多くデザインし、model145やキャビネットなどが数多く生産されている。
代表作に『J39』『ハンティングチェア』『スパニッシュチェア』などがある。