デザイナーのヨーエン・ベックマークは4代目最後の代表として、他の前任者と比べ一番長い9年間つとめていました。
ベックマークがつとめていたFDBモブラーの後期には、アメリカを中心にデンマークの家具に人気が出てきており、ベックマークは輸出を見越して、スティック状で安価であり、小さく梱包し組み立てれるチェアの開発をよくしていました。 その代表作品はJ108ですが、彼はそうした輸出を目的とした組み立て家具とJ80をはじめとするシリーズの両方を完全に別の方向性で開発しました。
J82は、これまでのチェアと大きく違い、モーエンセンが採用して以来、ヴォルタとヨハンソンの採用することのなかったペーパーコードを座面に用いたことです。家具生産に非常に厳しかったベックマークは、使い勝手を重視し、座面のペーパーコードがどの向きで座っても、座り心地がよくなるように考えて設計しています。
また、木部が非常に細く設計されていて、蒸気でひねりを加えて形成されるオークの背とアームレストは、このシリーズの為に開発されました。
従来より大きさの割に軽く、快適な背とアームレストを実現し、使い勝手よく日常使いが出来るという明確なコンセプトを持たせることで、J82は広い層から評価され、人気を博しました。 その使い心地はとても快適で、コペンハーゲンにある「世界一予約が取れない」と言われるnomaの姉妹店”108 Copenhagen”では同じシリーズのダイニングチェアのタイプが使われているほど。
シリーズの中でもJ82は、何時間座っても疲れない作りをさらにゆったりと座れるように、幅を約29cm大きくした79cmとシートハイもソファーと同じくらいの高さ36cmに設計されています。普段の疲れを癒しながら、このJ82とゆったりとした時間をすごしてみてはいかがでしょうか。
1958年FDBモブラー4代目代表に就任。社会繁栄に伴い「民衆の為の家具造り」という同社の哲学にこだわることなく、軽くて頑丈な扱い易い家具、輸送を考慮した組立てや分解が簡単な製品を世に送り出した。